SVIパラメータ化
このページではSVIモデルを詳しく解説します。ボラティリティ・サーフェスのパイプラインの中でSVIがどのような位置づけにあるかは、サーフェスの構築方法をご覧ください。他の手法との比較については、補間手法をご覧ください。
SVI(Stochastic Volatility Inspired) は、暗号資産オプションや株式オプションのボラティリティ・スマイルをフィッティングするための業界標準です。5つのパラメータを使って、単一の満期におけるスマイルの形状を表現します。この名前は、その関数形が簡略化された確率ボラティリティ・モデルから導出できることに由来しています。
パラメータを試す
以下の各パラメータを調整して、スマイルがどのように変化するかを確認してください。プリセットを使うと、よく使われる設定に切り替えられます。
SVIパラメータ・エクスプローラー
各パラメータの役割
- a(水準): スマイル全体を上下にシフトします。 が大きいほど全体のIVが高くなります。「ベースライン」の分散と考えてください。
- b(傾き): ウィングの急峻さを制御します。 が大きいほどウィングが急になり、OTMオプションが割高になります。
- (スキュー): スマイルを傾けます。負の はプット・スキュー(通常の状態)、正の はコール・スキュー(まれ)、ゼロは左右対称です。
- m(シフト): スマイルの最小点を左右に動かします。通常はゼロ付近です(ATMで最小)。
- (曲率): スマイルの底の丸みを制御します。 が小さいと鋭いV字型、大きいと滑らかなU字型になります。
ウィングの挙動
ATMから遠ざかるにつれて、スマイルは直線に近づきます。その傾きは次のとおりです。
- プット・ウィング(左側): 傾き =
- コール・ウィング(右側): 傾き =
典型的なプット・スキュー()では、プット・ウィングはコール・ウィングより急になります。このように有界で線形なウィングの挙動はSVIの重要な利点の一つで、外挿が不合理な値になることはありません。
市場データへのフィッティング
単一の満期について、異なる行使価格で観測されたIV値の集合が与えられると、SVIはそれらを最もよく再現する5つのパラメータを求めます。
手順:
- 対象の満期におけるIVの観測値をすべて収集します(通常5〜15個のデータ点)。
- 各観測値をトータル分散に変換します。観測IVの2乗に満期までの時間を掛けたものです。
- 重み付き最小二乗法のオプティマイザーを実行し、SVI曲線と観測値の差を最小化するパラメータを求めます。
- 信頼度で重み付けします。ATMオプションは重みを大きく(流動性が高い)、ビッド・アスク・スプレッドが狭いものは重みを大きく(信頼性が高い)、ディープOTMは重みを小さくします。
- 最適化の過程で裁定制約を課します(後述)。
速度: 1つの満期のフィッティングは10ミリ秒未満で完了します。サーフェス全体(すべての満期)は、気配の更新に合わせてリアルタイムで再構築されます。
裁定制約
SVIには、ほとんどの裁定を防ぐための制約を課すことができます。一部の制約はパラメータに関する単純な不等式ですが、バタフライ裁定がないことの確認には数値的なチェックも必要です。
ウィングの傾きの上限(バタフライ裁定がないための必要条件):
スマイルは、どのバタフライ・スプレッドもタダで利益を生まない程度に十分凸である必要があります。トータル分散で表すと、ウィングはRoger Leeの上限(後述)より速く増加してはなりません。
これは必要条件であり、十分条件ではありません。この条件を満たしていても、アット・ザ・マネー付近で負の密度を示唆するスマイルはありえます。そのため、フィッティングでは対数マネーネスのグリッド上でGatheralの密度関数 も確認します。
最小点での分散の非負性:
スマイルの最小値はゼロ以上でなければなりません。
カレンダー制約(満期間):
トータル分散は、すべての行使価格において満期とともに増加しなければなりません。これは、連続する満期スライス間ですべての について を確認することで課されます。
バリエーション
SVIには重要なバリエーションが2つあり、それぞれ専用のページがあります。
ORC Wing(Jump-Wing) は、ATM分散、ATMスキュー、プット・ウィングの傾き、コール・ウィングの傾き、最小分散というトレーダーにとって扱いやすい量を使ってSVIを再パラメータ化したものです。スマイルは同じで、調整つまみが異なります。スマイルを手動で編集する際に便利です。
SSVI(Surface SVI) はSVIをサーフェス全体に拡張したもので、構造上カレンダー裁定がないことを保証します。各満期を独立にフィッティングする代わりに、SSVIは共通のスキュー・パラメータとスマイルの急峻さを表す関数を通じて満期同士を結び付けます。自由度は少なくなりますが、満期間の後処理による修正は不要です。
数式エクスプローラー
SVIはトータル分散と対数マネーネスで動作します。これを使って、IV、トータル分散、行使価格の各表現の間で変換できます。
数式エクスプローラー
なぜSVIなのか
- 5つのパラメータで、観測されるほぼあらゆるスマイルをフィッティングできます。スプラインよりパラメータが少なく、3パラメータのモデルより柔軟です。
- 有界なウィングにより、外挿が暴走しません。SVIで起こりうる最悪のケースでも、有限の傾きでの外挿にとどまります。
- シンプルな制約でウィングと分散の水準を妥当な範囲に保てます。また、バタフライ裁定はグリッド上で数値的に低コストで確認できます。
- 高速なフィッティングにより、市場の動きに合わせてサーフェスをリアルタイムで更新できます。
- 暗号資産や株式のボラティリティ・デスクで広く使われています。Hypercallは、各原資産のサーフェスを、その原資産に設定されたボラティリティ・ソースから取得しています。
数学的な直感を養う
SVIをゼロから学ぶインタラクティブレッスン · 全5セクション · 前提知識不要上のインタラクティブ・レッスンでは、SVIを基本原理から解説します。SVIが何をなぜパラメータ化するのか、5つのパラメータそれぞれの単独での働き、分散からボラティリティへの変換、無裁定制約、そして市場データへの実践的なキャリブレーションを扱います。
オープンソース実装
| リポジトリ | 参照する理由 |
|---|---|
| SVI-Vol-Surface | 可視化付きのPythonによるSVIキャリブレーション |
| QuantLib | C++によるSVIパラメータ化 |
SVIのバリエーション: ORC Wing(Jump-Wing) | SSVI(Surface SVI)
関連項目: サーフェスの構築方法 | 補間手法 | SABRモデル | スキュー