証拠金フロア
証拠金フロアは、シナリオ分析においてヘッジされたポジション同士が相殺される場合でも、ポートフォリオが最低限の証拠金要件を維持することを保証します。
概要
シナリオベースの証拠金は、次のような場合にリスクを過小評価する可能性があります。
- スプレッドが完全にヘッジされているように見えても、経路依存リスクを抱えている場合
- 満期間近のガンマが、離散的なシナリオで捕捉できるよりも速く加速する場合
- 極端な値動きの際に相関の前提が崩れる場合
フロアはバックストップとして機能します。つまり、シナリオ分析の結果がどれほど有利に見えても適用される最低証拠金です。
仕組み
ポートフォリオ証拠金のオプションフロアは満期ペイオフ基準を用い、原資産と満期ごとに個別に計算されます。
- 一致する契約のネッティング: 原資産、満期、行使価格、オプションの種類がすべて一致する場合に限り、ロングとショートの数量をネッティングします。
- 個別基準額の計算: 残ったショートのコールとプットの各区分について、行使価格にネットショート数量を掛けた値を合計します。
- コール側テールの確認: コールの合計数量がネットショートの場合、スポット価格の上昇に伴い満期時の潜在的損失は無制限になります。その満期グループについては個別基準額の全額を維持します。
- 有限な損失の認識: それ以外の場合は、満期時スポットがゼロの点およびすべての行使価格において、グループの符号付き本質的価値ペイオフを計算します。最大の現金損失(負のペイオフがない場合はゼロ)を求め、この損失と個別基準額のうち小さい方を使用します。
この満期ペイオフ基準ではプレミアムは除外されます。異なる満期間や原資産間でのフロアのクレジットはありません。
ここで、 は原資産、 は満期を表します。最終的なポジションの証拠金要件は次のとおりです。
フロアはパーセンテージによる偶発損失への備えであり、証拠金に対する最大損失の上限ではありません。スキャニングリスクがフロアを上回る場合は、シナリオのスキャニングリスクが全額適用されます。独立して約定し得る未約定注文は、それ単体のリスクと、その約定によって失われる可能性のある既存のフロア保護の両方を確保します。未約定の買い注文は、独立して執行可能な売り注文を保護できません。コンボのレッグはまとめて評価されますが、別々のコンボ注文は独立して約定する可能性があります。部分約定の後も、残りの注文に必要な資金が確保されている必要があります。
オプションの偶発損失への備え
| 原資産 | フロア係数 | 適用対象 |
|---|---|---|
| すべての上場原資産 | 1.5% | 満期単位のフロア基準額の合計 |
本番環境では、株式を原資産とするものを含むすべての原資産に単一のフロア係数を使用しています。現在の値は PM リスクパラメータ に記載されています。
例: 同一満期で、行使価格 100,000 の BTC コールを 10 枚ショートし、行使価格 105,000 の BTC コールを 5 枚ロングすると、上側テールに 5 枚のネットショートコールが残ります。個別基準額は全額の $1,000,000 のままとなり、1.5% でフロアは $15,000 になります。ロングコールはスキャニングリスクを減らすことはできますが、このグループのフロア基準額は減らしません。
短期ガンマ・オーバーレイ
満期まで 0 時間超かつ 48 時間以内のショートオプションには、ガンマ加速に対する追加料金が課されます。本番環境では、このオーバーレイのスプレッドクレジット方式を使用しています。
レッグは原資産、満期、オプションの種類ごとにグループ化されます。コールがプットと相殺されることはありません。各グループについて、各行使価格 におけるネット数量を とすると、次のようになります。
- はキッカー係数(1%)、 はスポット価格です。
- はグループの満期時最大損失で、満期時スポットがゼロの点およびグループ内のすべての行使価格で確認されます。
- ネットショートのコール側テールにはクレジットは付与されません。 コールグループがネットショートの場合、マッチしたショートにも が全額課されます。
- 未約定注文もオーバーレイの対象となるため、満期間近の待機中のショート注文は約定したものとして課金されます。
オーバーレイはグロスショート 1 契約あたりスポットの 1% を超えることはなく、ネットショート 1 契約あたりスポットの 1% を下回ることもありません。これはフロアとスキャニングリスクのうち高い方に上乗せされます。
オーバーレイは上乗せされるため、短期のスプレッドにはその最大損失を超える額が課される場合があります。こうしたブックを最大損失までに制限する限定リスク上限(V3)は予定されていますが、まだ適用されていません。PM リスクパラメータ をご参照ください。
パラメータ
| パラメータ | 説明 | 値 |
|---|---|---|
option_floor_factor | 満期単位のフロア基準額に対する割合 | 1.5% |
gamma_kicker_factor | ショート 1 契約あたりのオーバーレイ(スポットに対する割合) | 1.0% |
expiry_threshold | ガンマ・オーバーレイの適用時間枠 | 48 時間 |
| ガンマ・オーバーレイ方式 | マッチしたショートへのクレジットの付与方法 | スプレッドクレジット |
| 未約定注文 | フロアとオーバーレイへの算入 | あり |
計算例
例 1: ショート・ストラングル
ポジション: 同一満期で BTC 90,000 プットを 1 枚ショート + BTC 110,000 コールを 1 枚ショート スポット: $100,000
ネットショートのコール側テールがあるため、満期グループ全体で個別基準額が維持されます。証拠金は最低でも $3,000 にガンマ・オーバーレイを加えた額となり、スキャニングリスクが上回る場合はさらに高くなることがあります。
例 2: 満期間近のポジション
ポジション: 24 時間後に満期を迎える BTC 100,000 コールを 5 枚ショート スポット: $100,000
例 3: ヘッジされたスプレッド
ポジション: 同一満期で BTC 100,000 コールを 10 枚ショート + BTC 105,000 コールを 10 枚ロング スポット: $100,000
コールにはネットショートの上側テールがないため、有限な満期時損失によってフロア基準額は $1,000,000 から $50,000 に減少します。証拠金はスキャニングリスクと $750 のフロアのうち大きい方に、短期ガンマ・オーバーレイを加えた額となります。
このスプレッドが満期まで 48 時間以内であれば、10 枚のショートはすべてロングとマッチするため、オーバーレイは min(1% × $100,000 × 10, $50,000) = $10,000 となります。スプレッドの満期時損失 $50,000 は全額の料金より大きいため、この場合クレジットによる減額はありません。より幅の狭いスプレッドでは実際に減額されます。PM 証拠金の計算例 をご参照ください。異なる満期にまたがるレッグにはスプレッドクレジットは付与されません。
関連ページ:
- ポートフォリオ証拠金: シナリオベースの証拠金計算
- PM 証拠金の計算例: フロアとオーバーレイを含む完全な計算
- 標準証拠金: オプションのみの証拠金